入れ替え戦出場、A昇格、対抗戦全勝、、、いずれも東大ラグビー部が掲げて続けてきた目標であるが、降格後1度として果たされたことはない。自分がプレーしたここ数年の感想だが、大きな要因にチーム文化がないことだと分析する。
戦略、作戦、戦術は毎年その時々に学生首脳陣によって決められる。各代の首脳陣がベストを尽くし、目標達成のために最善だと思われるものを採択する。しかし、各代の首脳陣は離散的であり、知の蓄積がほとんどないところから毎年始まっている。東大には長期にわたりチームを指導、監督する人間もいない。せいぜい、下級生から見た昨年の分析や、各代の首脳陣によるレビューを参考にする程度だろう。つまり、組織としての経験値(知)はほぼないのである。毎年選手の入れ替わる学生スポーツではあるが、東大はその運営をほぼ学生に委ねられているために特にその傾向が顕著である。
昨年も書いたが、選手に恵まれない東大は4年間の成長が勝負の頼みなのにこれは致命的である。だが、先にもあげた理由から環境面を構造的に大きく変えることはできない。
東大が成し得るのは、学生による文化の醸造、そして伝承。そこに東大の活路があると考える。かつての東大が伝統のタックルを誇っていたように。
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フィジカル。ラグビーはフィジカルのスポーツである。肉体の勝負からは決して避けることができない。用意周到な作戦も、圧倒的な体力の差には霞んでしまう。勝負の土俵に上がるには、まず、肉体の素養が資格として問われる。
始めたばかりで右も左もわからない時、部室に転がっていたラグビー雑誌に載っていた、某花園常連校監督の言葉、「ウチはよそと比べてスキルフルな選手が入ってこない。だから体を鍛えて、そこで勝負するんです。」体も小さく、未経験者であった私にとってそれは魔法の言葉だった。現在に至るまでその言葉は私の金科玉条となっている。
東大においても近年フィジカルが重要視されるようになってきた。本格的にフィジカル強化に取り組み始めた昨季は、試合でのパフォーマンスはそれまでに比べ格段に上がった。格上と目された相手に、コンタクト面で圧倒するシーンも少なくなかった。
一定の成果があったことは非常に評価できることだし、やってきたことがある程度正しかったのだろう。だが、シーズンの結果はどうだっただろうか?
チームの目標であった入れ替え戦出場も初戦を落とし果たせなかったばかりか、京大戦も苦汁を舐める結果となった。木下も言及していたが、それだけが原因ではないとはいえ、鋭いDFにやられ、なにもできないまま封殺されてしまったのは厳然とした事実だ。
確かに一橋、京都は堅牢なDFを持っていた。幾度となく足元に突き刺さってきた。
特に一橋は、それを武器に入れ替え戦出場という結果を出した。
だが、手放しに相手を称賛し、それに倣おうとするばかりでいいのか?
しつこく激しく体を当て続け、相手の堅守に穴を穿つ、相手の攻撃を寸断する。それこそが我々の目指したものではなかったのか?そのためのフィジカル強化ではなかったのか?
努力が足りない、の一言で一蹴することは誰にだってできる。だが、自分の目には、みな勤勉に頑張っていた、努力の絶対量それ自体が問題ではないように映った。
「ジムとグラウンドをつなげる。」先の某監督のポートレートの横には、大きくそう書かれていた。
これは字面通りの意味だけでなく、その裏には「努力の最大効率化」というメッセージが隠されていると思っている。
ジムでの鍛錬の成果はグラウンドで発揮されて初めて意味がある。「あ~今日もめっちゃ追い込んだったわ~!」という言葉で終わってしまってはただの自己満足でしかない。そのトレーニングは体のどこに作用し、それがグラウンドでどう活かされるのか?グラウンドでの動作に変換するために何が必要なのか?常に考え続けてほしい。
そしてこれはフィジカルに限った話ではない。全体練習、1つ1つのメニューは試合のどのピースなのか。個人練習、その練習は何を意図し、それは正しいアプローチなのか。
東大のラグビーという大きな彫刻のどの部分を今自分は磨いているのか?盲目的に目の前の練習をやるだけじゃ全体の調和は図れない。
もう一度言うが、がむしゃらに、ひたむきに、最大限努力することは非常に重要で、それは大前提。みな真摯に取り組んでいると思う。だが、それだけでは勝てない。
チームが掲げる目標を達成するには、東大生には圧倒的に時間が足りない。スタート、環境で劣る東大生が勝つためには、最大量かつ最大効率化された努力を4年間積み重ねる必要がある。
そして初めて、困難な目標の達成が現実感を帯びてくる。
長々と偉そうなことを書いてしまった。ラストシーズンとなった今季、首脳陣となったからこそ、昨年以上にプレーヤーとしてのパフォーマンスにこだわりたい。その態度をもってして、後輩たちに結果と文化を遺したい。
東大ラグビー部に誇りを持ち、
12月の熊谷に最高の仲間たちと立てることを信じて、
全員で日々を戦おう。
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